補助金・助成金

【2023年最新版】ものづくり補助金とは? 補助金と助成金を正しく理解し、事業を成長させよう/2023年度第14次公募の最新情報

事業者にとって、資金繰りは常について回る課題と言えるでしょう。「当社には技術的に強みがあり、それを製品・サービス化し、市場において成長できる戦略も既に描いている。しかし、それを具体化するには、資金が・・・。」

資金調達としてまず思い浮かぶのは、金融機関からの借入れですが、「融資」といえば聞こえはいいですが、つまりは借金です。借金であれば、担保や返済義務が生じますが、それらが必要ない、資金調達方法をご存知でしょうか。それは、国や地方公共団体が実施する、各種の補助金・助成金です。この記事では、補助金と助成金、それぞれの特徴と相違点、中でも「ものづくり補助金」に関して、詳しく解説します。

補助金と助成金の基本を理解する

補助金や助成金が、他の資金調達に比べてどのような性格を持つのか、正しく理解しておくことは非常に大切です。

  1. 補助金・助成金の目的

補助金・助成金は、国の施策の一部ですが、その目的をご存知でしょうか。政府は、国民が経済的に豊かな生活が送れるよう、その重要な指標であるGDP(国内総生産)を拡大するために、種々の施策を講じています。その一環として、事業者に補助金・助成金を支給することで、従業員の給与や設備投資を増やし、事業を発展させることで労働者、すなわち最終的な消費者の賃金を向上させようという目論見があるのです。

  1. 補助金・助成金の共通した特徴

補助金・助成金は、収益納付制度などの一部の例外はありますが、一旦支給されたら、原則として返済する義務がありません。これが金融機関からの借入れとは大きく異なる点で、大いに活用すべき理由の一つです。また、借入れの場合は、金融機関が、企業の収益額や企業規模に応じて、貸付の限度額を調整しますが、補助金・助成金の場合は、予算内で事前に決められた額を受け取ることができます。

補助金・助成金は、企業が事業を完了し、支給申請を行ったのち、給付されます。つまり、後払いです。そうであれば、補助金・助成金事業を遂行するにあたり、費用が生じる際には、手元資金か、借入金で賄わなければなりません。経費を現金で支払ってから、給付金が入金されるまでには、早くても3カ月、長いと1年以上かかることもあり得ます。従って、当座の資金調達方法については、十分に考慮しておく必要がありますし、万一、手続きの不備などで補助金・助成金が給付されないケースも想定しておくべきです。

  1. 補助金と助成金との違い

それでは次に、補助金と助成金との違いについて見ておきましょう。

補助金は、公募期間が一定時期で期間も短いです。先に触れたように、補助金の財源は税金ですから、国会でその年度の予算が決定され、4月か5月に公募が開始されるというのが通常のパターンです。公募開始から締め切りまで、2週間から2カ月程度と短期間ですので、「気付いたら、申請期間が終了していた」という方も多いようです。

これに対して助成金は、原則として1年を通じて申請することが可能なものが多くなっています。また補助金には一度きりの給付になることが多いという特徴がありますが、助成金は再申請が可能で何度でも給付を受けることができるものもあります。

最後に、採択基準における相違点についても、確認しておきましょう。

補助金は、応募期間中に寄せられた申請書に対し、内容についての厳正な審査が行われ、優秀と判断された事業計画が採択されます。前述したように、補助金・助成金は、政策に従って実施される制度です。従って、ここでいう「優秀」とは、「いかにこの事業計画が、他の応募者と比べて、制度の目的に合致しているか」という意味合いになります。提出が必須の事業計画書では、その点について、明確かつ客観的にアピールする能力が問われるのです。

助成金は、申請書が形式要件を満たしていれば、他の事業者と比較されることもなく、給付の対象となります。万一、申請書が受給条件を満たしていない場合でも、申請時に窓口で指摘されるので、提出前に事業計画を見直すこともできます。

このような点から見ると、補助金よりも助成金の方が、経営者の方にとっては利用しやすい制度と言えるかもしれません。しかし補助金は種類が豊富にあり、助成金に比べて支給額は高額になるパターンもあります。また支給の対象となる、経費の幅が広い点も、補助金の魅了といえるでしょう。

補助金と助成金、どちらを選択するかですが、自社がこれから志向する事業の性格を把握し、それに相応しい支援制度を見極めることが重要になります。

中小企業生産性革命推進事業が実施する3つの補助金事業

2020年3月、新型コロナウィルスの世界的な感染拡大に伴い、経済は甚大な影響を受けました。政府は、その被害を少しでも軽減し、事業者が再度起ち上るための手助けとして、また経済の活性化を図るため、各種の補助金制度を実施しました。

2021年3月、中小企業庁は、「中小企業生産性革命推進事業について」※1という報告書を公表し、制度内容について詳細に述べています。

それによると、中小企業は慢性的な人手不足という構造の変化、被用者保険や働き方改革の適用拡大、賃上げなど、数年度にまたがった制度変更への対応が求められています。そのため中小企業基盤整備機構は、中小企業の生産性向上を数年に渡って継続的に支援することを目的に、「生産性革命推進事業」を創設し、中小企業の設備投資や販路開拓、IT導入などの資金援助を行うことを決定。2019年度補正予算で3,600億円、2020年度補正予算一次、二次、三次合計で4,000億円、2021年度補正予算で2.000億円が計上されました。

中小企業生産性革命推進事業が推進する、補助事業の3本柱が以下になります。

1 ものづくり補助金

経営者の方なら、一度や二度は耳にしたことがおありでしょう。正式名は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といいます。中小企業および小規模事業者が、新製品やサービス、生産プロセスの改善に必要な設備投資への費用の一部を補助するものです。名称に「ものづくり」とはありますが、製造にかかわる業種だけではなく、IT業、商業・サービス業など、幅広く活用することが可能です。

補助の上限は次の通りとなっています。

一般型

  • 通常枠:750万円~1,250万円
  • 回復型賃上げ・雇用拡大枠:750万円~1,250万円
  • デジタル枠:750万円~1,250万円
  • グリーン枠:1,000万円~2,000万円

    ※従業員の規模により補助上限金額は異なります(後述)

グローバル展開型:3,000万円

補助率も確認しておいてください。

一般型

  • 通常枠:1/2 小規模事業者等:2/3
  • 回復型賃上げ・雇用拡大枠:2/3
  • デジタル枠:2/3
  • グリーン枠:2/3

グローバル展開型:1/2 小規模事業者等:2/3

2 小規模事業者持続化補助金

正式名称は、「小規模事業者持続的発展支援事業」です。

小規模事業者が、販路開拓や生産性向上に新たに取り組む際、国が補助金を支給する制度です。例えば、飲食店が新しくテイクアウト販売を開始する場合、チラシやWEBによる宣伝活動の補助なども対象となります。

補助の上限は次の通りです。

  • 通常枠:50万円
  • 賃金引上げ枠:200万円
  • 卒業枠:200万円
  • 後継者支援枠:200万円
  • 創業枠:200万円
  • インボイス枠:100万円

補助率は2/3です。

3 IT導入補助金

正式名称は、「サ―ビス等生産性向上IT導入支援事業」です。

中小企業において、バックオフィス効率化等のため、付加価値の向上に繋がるITツールの導入を後押しすることを目的としています。

補助額は、30万円から450万円までと幅があり、補助率は1/2です。

中小企業庁「中小企業生産性革命推進事業について」

「ものづくり補助金」の概要と直近の動向

ここからは、ものづくり補助金の概要と、直近の動向について解説します。

1 「ものづくり補助金」の概要

「ものづくり補助金」は、中小企業等の新商品・サービス開発や、生産プロセス改善のための設備投資を支援する事業として、2019年度補正予算にて措置されています。その後、2020年度第一次・二次補正予算においては、新型コロナウィルスの感染拡大による経済への被害を抑え、経済を回復基調に乗せるべく、前向きな投資を行う事業者に対しては、「コロナ特別枠」を創設し支援を行いました。現在はコロナ特別枠の募集は終了していますが、一般型に「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」が追加されています。

ものづくり補助金は、「一般型」、「グローバル展開型」の2つに分類されます。

なお、特に優れた内容が求められるグローバル展開型は、補助金申請する企業が海外展開を視野に入れて事業を行っている事が条件です。一般型と比較すると、補助金額に大きな違いが見られます。一般型が主に750万円から1,250万円であるのに対し、グローバル展開型は3,000万円までと高額になっています。海外展開は、その手法により4つの類型に分けられています。

・海外直接投資型

グローバルな製品・サービスの開発、供給体制を構築する。

・海外市場開拓型

国内に補助事業実施場所を有すること、製品等の販売先の1/2以上が海外顧客となること、などの条件を満たす必要あり。

・インバウンド市場開拓型

国内に補助事業実施場所を有すること、サービス等の販売先の1/2以上が訪日外国人となること、などの条件を満たす必要あり。

・海外事業者との共同事業型

外国法人と共同で開発を行い、事業展開に伴う設備投資を行う。

以上、3つの類型の相乗効果により、中小企業の付加価値向上の実現を目指しています。

2 「ものづくり補助金」 直近の動向

ものづくり補助金は、中小企業が新商品・サービスの開発及び、生産プロセス改善のため、設備投資などの推進を援助する事業して、2012年度補正予算で創設され、以来毎年度措置されており、これまでに延べ7万社以上の設備投資を後押ししてきました。現在は、第14次締切分※の公募が2023年1月11日(水)から開始されており、2023年4月19日17時で申請(応募)締切となります。

※「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領」(第14次締切分)

ものづくり補助金の最近の動向を見ると、もっとも大きく変化したのは第10次締切分の公募です。主な変更点は以下の3点でした。

・補助上限額の設定の変更
 第9次締切までは従業員規模に関わらず一律1,000万円以内だった補助上限額が、第10次締切からは以下のように変更されました。

  • 従業員5人以下:750万円以内
  • 従業員6〜20人:1,000万円以内
  • 従業員21人以上:1,250万円以内


・補助対象事業者の見直し・拡充

  • 補助対象事業者に、資本金10億円未満の特定事業者を追加し、中小企業から中堅企業への成長途上にある企業群を支援
  • 再生事業者を対象に補助率を2/3に引き上げ

・一般型に「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」を新設

第9次締切まで一般型は「通常枠」のみでしたが、第10次締切からは上記の3つの枠を新設。これら3つの枠は「通常枠」が補助率1/2なのに対し、いずれも2/3となりました。またグリーン枠は補助金の額が最大2,000万円と、これも「通常枠」を大きく超えるものとなりました。

それぞれの申請要件は、以下の通りとなっています。

  • 回復型賃上げ・雇用拡大枠
    ①前年度の事業年度の課税所得がゼロであること
    ②常時使用する従業員がいること 
    ③補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、その時点での給与支給総額、事業場内最低賃金の増加目標を達成すること

  • デジタル枠
    ①DXに資する革新的な製品・サービスの開発であること
    ②デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善であること
    ③経済産業省が公開するDX推進指標を活用して、DX推進に向けた現状や課題に対する認識を共有する等の自己診断を実施するとともに、自己診断結果を応募締切日までに独立行政法人情報処理推進機構に対して提出していること
    ④独立行政法人情報処理推進機構が実施する「SECURITY ACTION」の「★一つ星」または「★★二つ星」いずれかの宣言を行なっていること

  • グリーン枠
    ①温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービスの開発であること
    ②炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供の方法の改善であること
    ③3〜5年の事業計画期間内に、事業場単位での炭素生産性を年率平均1%以上増加する事業であること
    ④これまでに自社で実施してきた温室効果ガス排出削減の取組の有無(有る場合はその具体的な取組内容)を示すこと

また、第7次締切分の公募からは以下の変更が見られました。

・加点項目

審査で加点を希望する場合は、加点してもらいたいポイントに合わせ、以下の書類の提出が必要です。

成長性加点:有効期間内の「経営革新計画」※4の承認を取得した事業者。

災害等加点:有効期間内の「事業継続力強化計画」※5の認定を取得した事業者。

政策加点:開業届または履歴事項全部証明書(創業・第二創業の場合)

なお、専門家及び、認定経営確認等支援機関等の支援を受けている場合、支援者の名称、支援期間、支払った報酬についての記載が義務付けられました。支援を受けているにも関わらず、その事実を記載していないことが明白になった際は、申請に係る虚偽とみなされ、不採択あるいは採択決定の取り消し、または交付決定の取り消しが行われます。

「経営革新計画」

※「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領」(第14次締切分)

「事業継続力強化計画」

まとめ:補助金を獲得するために、コンサルティング会社を活用しましょう。

国や地方公共団体は、政策を滞りなく遂行するため、様々な施策を行っています。その施策の一環として、政府や自治体は、事業者を資金面から援助していますが、その代表的なものが、補助金・助成金です。補助金と助成金とでは、性質に違いがあるため、両者の相違点を把握した上で、自社が展開する事業に相応しい方を選択するようにしてください。

今回は、補助金の3本柱のうち、ものづくり補助金を詳細に取り上げました。

同補助金は、綿密な事業計画書、賃金引上げ計画表明書、その他加点に必要な資料を用意し、書類の提出後も厳正な審査を経たのち、採択を仰がねばなりません。

採択を受けてからも、給付金の振り込みまでには多くの行程をこなす必要があり、専属のチームを発足させ、申請作業に当たらせたいところです。ただ、中小企業や小規模事業者では、リソースに限りがあるため、そうもいきません。

そんな時には、補助金を専門に扱っている、外部のコンサルティング会社を活用するという選択肢もあります。こうしたコンサルティング会社では、自社がものづくり補助金の対象となるのか、その相談から事業計画書などの申請書類の作成、申請に至るまで、事業者をサポートしてくれます。