新生銀行といえば、2021年9~12月にニュースとなったSBIホールディングスとの株式公開買付(TOB)のやりとりを思い出す人もいるのではないでしょうか。この一連の報道で、新生銀行に対するイメージは、人それぞれで分かれるかもしれません。しかし、預金者の視点では非常に利用価値の高い銀行の一つです。
本記事では、新生銀行のメリット・デメリットを紹介するとともに、お得な使い方を紹介します。口座開設方法も説明しますので、ぜひ参考にしてください。
新生銀行はどんな企業?
まずは、新生銀行の企業概要や特徴について紹介します。
新生銀行の基本情報
新生銀行は、1952年に日本長期信用銀行(長銀)として設立された銀行です。日本長期信用銀行は、46年という長い歴史のなかで1998年に経営破たんや一時国有化などがありました。外資系のニュー・LTCB・パートナーズ・シービーに売却され、2000年に「新生銀行」として新たなスタート。
SBIホールディングスによるTOBにより、2021年12月17日付でSBIホールディングスの連結子会社となりました。今後は、SBIグループのさらなる成長を支える中核企業として期待されています。
新生銀行の特徴
新生銀行は、2000年のスタート以来、従来の金融サービスでは満たされない顧客のニーズに対応する商品・サービスを提供しています。他行よりも先行してインターネットバンキングに本格参入したり、提供する商品やサービスも独特であったりするのが特徴の銀行です。
例えば、円預金や保険など、新生銀行で提供しているさまざまな商品やサービスを1つの口座で管理できる「新生銀行総合口座パワーフレックス」は、代表的な商品の一つ。他にも、以下のようなユニークなサービスが豊富です。
新生ステップアッププログラム | 取引内容に応じて「新生スタンダード」「新生シルバー」「新生ゴールド」「新生プラチナ」「新生ダイヤモンド」の5ステージに分けられ、優遇サービスが受けられる |
新生ポイントプログラム | 振込入金や金融商品取引といった銀行サービス利用に加え、毎月のエントリーやログインなどでポイントが貯まる |
住宅ローン 安心パック | 収支の変化に応じて毎月の返済額を調整できるコントロール返済機能や、契約金額や借入期間に応じて病児保育や家事代行サービスなどが付帯している |
新生銀行の3つのメリット
新生銀行を利用する主なメリットを3つ紹介します。
他行振込手数料が安い
新生銀行では「新生ステップアッププログラム」のステージによって他行へ振り込みするときの手数料が1ヵ月1~50回まで手数料無料となるメリットがあります。例えば、最低ステージの「新生スタンダード」の場合はインターネットによる他行振り込みが月1回まで無料。2回目からは1回あたり214円(税込み)かかりますが、振込金額によっては他行よりも割安となるでしょう。
多くの金融機関では、「振込額が3万円未満かどうか」で振込手数料額に差を付けているものの、新生銀行では振込額に関係なく一律です。そのため、振込金額によっては他行に比べて割安になるだけでなく、割高になる可能性もある点は注意しましょう。金利が低く、わずかな利息しか期待できない時代においては、手数料などの余計な支出が発生しないようにしたいものです。
一定条件を満たすとATM手数料が無料
2022年5月1日よりリニューアルされた「新生ステップアッププログラム」により、ATM手数料も無料となる特典を受けられやすくなりました。新生銀行で提携金融機関ATMを使って出金するときの手数料は、原則時間に関係なく一律110円(税込み)です。しかし、5段階あるステージのうち「新生スタンダード」以外はすべて無料(一部対象外あり)となります。
例えば、2段階目の「新生シルバー」になるためには、以下の要件のうち1つを満たせばOKです。
・預入れ総資産の平均年残高が100万円以上
・給与振り込みとして1回以上入金がある
・投資商品の年間判定残高が10万円以上
・口座自動引き落としが6回以上
・プリペイドカードGAICAを10万円以上利用している
例えば、給与振り込み口座として登録し、1回以上の入金があれば365日・24時間いつATMを利用しても手数料がかからないのは、大きなメリットです。
ポイントが貯まりやすい
近年は、各種共通ポイントと提携し取引によってポイントが貯まるようにしている金融機関も増えていますが、新生銀行の「新生ポイントプログラム」は、ずば抜けて貯まりやすくなっています。例えば、ログインなどでもポイントが付与されるのが特徴です。
・新生ポイントプログラムにエントリー:1ポイント
・次月引き続いてエントリー:3ポイント
・新生パワーダイレクト(インターネットバンキング)にログイン:3ポイント
少しながらも、パソコンやスマホを使ってコツコツと貯めることが可能です。ログインやエントリーだけでなく、銀行取引をすればポイント数はより貯まりやすくなります。例えば、1回1万円以上、他行からの振込入金があれば25ポイント(月最大200ポイント)貯まるため、給与口座として利用すれば毎月自然に貯まっていきます。
積立投資信託を申し込んで毎月5,000円以上積み立てしながら10ポイントずつ貯めていくのもいいでしょう。外貨預金(毎月1万円以上)の積み立てでも10ポイントずつ貯められます。他にも、さまざまな取引でポイントが貯まりますので、興味がある人は新生銀行のサイトでチェックしてみましょう。ちなみに、貯めるポイントは、「Tポイント」「nanaco」「dポイント」の3つから選択できます。
手数料を節約するだけでなく、銀行サービスを利用してポイントを貯めていくことも低金利時代における銀行選びの大切な基準の一つです。
新生銀行のお得な使い方の事例
ここからは、新生銀行のお得な使い方の事例を2つ紹介します。
事例1:給与口座として使う
1つ目は、新生銀行の口座を開設し、給与振り込み口座として利用する方法です。前述したように給与振り込み口座に指定し1回以上の振り込みがあれば、「新生ステップアッププログラム」のステージが「シルバー」となり、以下のメリットを享受できます。
・ATM手数料が無料(一部対象外)
・インターネットによる他行宛振込手数料が1ヵ月3回まで無料
・プリペイドカードGAICAの外貨チャージ手数料がキャッシュバックされる
・毎月最低29ポイント(エントリーポイント1ポイント+連続エントリーポイント3ポイント(※)+振込入金ポイント25ポイント)貯まる
※初回はなし
事例2:日常の買い物にプリペイドカードGAICA(Flex機能付き)を利用する
プリペイドカードGAICA(Flex機能付き)とは、新生銀行グループ会社のアプラスが発行している発行手数料や年会費無料のカードです。新生総合口座パワーフレックス口座と連動させれば、外貨や円貨でチャージしたり、オートチャージしたりすることができます。国内外のVisaマークのある店やオンラインショップなどで、チャージ残高の範囲内の利用が可能です。
「新生ステップアッププログラム」のステージは、国内・海外でのショッピングのプリペイドカードGAICA(Flex機能付き)利用金額が10万円以上あればが「シルバー」となり、次のようなメリットを享受できます。
・ATM手数料が無料(一部対象外)
・インターネットによる他行宛振込手数料が1ヵ月3回まで無料
・プリペイドカードGAICA(Flex機能付き)(発行:アプラス)外貨チャージ手数料がキャッシュバックされる
新生銀行の口座開設方法
実際に、新生銀行で口座を開設する方法を見ていきましょう。新生銀行で口座開設する際は、3つの方法から選択することができます。
店頭で口座開設
新生銀行の営業時間内に店舗に直接出向ける人は、店頭で口座開設をするのもいいでしょう。最もオーソドックスな方法で、本人確認書類を持参すれば、その場で口座開設ができます。他行よりも先行してインターネットバンキングに本格参入したからといっても、決してサービスが低下したわけではなく、店舗相談や手続きができるのは新生銀行の強みです。
なお、口座開設にあたりマイナンバーの届け出は必須ではありませんが、預金に合わせて投資信託の口座開設や海外送金を利用する場合にはマイナンバーの届け出が必要になります。先述したように、投資信託の積み立てでポイントの貯まり方も速まり、資産形成にも効果的のため、忘れずマイナンバーの確認できる書類を準備しておきましょう。
新生銀行では、一般的な銀行と同様に、手続きなどの際に本人確認の一つとなる印鑑登録も可能ですが、署名(サイン)で登録もできます。そのため、印鑑の持参は必須ではありませんが、印鑑を登録したい人は印鑑もあわせて持参するようにしましょう。なお、新生銀行では通帳が発行されません。また、キャッシュカードは後日郵送されます。
来店時の予約は不要ですが、口座開設にあわせて資産運用・保険加入などの相談もしたい場合は、事前にネットで予約をしておくのもおすすめです。
アプリで口座開設
「店舗に出向けないけど、できるだけ早く口座を開設したい」という人は、アプリで口座開設申し込みをするのがおすすめです。最短当日~1週間程度で開設することができます。ただし、アプリでの開設は申込時に運転免許証が必要です。運転免許証を持っていない人は、以下で紹介する別の方法で申し込みしてください。
なお、申し込みにあたり白紙に署名したものも必要です。事前に準備しておきましょう。申し込みの流れは、次の通りです。
1.スマートフォンに「新生銀行アプリ口座開設(無料)」をダウンロードする
2.氏名、住所など必要項目を入力。運転免許証の内容と異なる場合、不備として受付されない可能性があるため、引越しをしたり、結婚して姓が変わったりした後も運転免許証の記載内容を変更しないまま使っている人は注意
3.運転免許証と署名(サイン)を撮影する
4.申込者本人の顔写真を撮影する
5.情報を送信したら、口座開設申し込み手続き完了
後日、キャッシュカード/セキュリティーカード(簡易書留)および暗証番号通知(特定記録)が別便で郵送されます。
Web+郵送で口座開設
運転免許証を持っていない人や未成年者は、アプリでの口座開設申し込みができません。そのため、パソコンやスマートフォンからWebで口座開設申し込みをした後、必要書類の郵送が必要です。郵便事情にもよっても異なりますが、最短約2週間で口座開設ができます。申し込みの流れは、次の通りです。
1.新生銀行の公式ウェブサイト上の「口座開設申込フォーム」で必要事項を入力する
2.本人確認の方法で、「郵送で確認」を選択
3.申込書の取り寄せの際、「お客さまのプリンターで印刷」または「新生銀行から郵送で取り寄せ」のどちらかを選ぶ。郵送で取り寄せを選択する場合は、申込書が届くのを待つ
4.印刷または郵送で取り寄せた申込書に署名(または捺印)し、本人確認書類と一緒に新生銀行へ郵送。本人確認書類は、提出するものによって1~3点必要
後日、キャッシュカード/セキュリティーカード(簡易書留)および暗証番号通知(特定記録)が別便で郵送されます。
なお、未成年者の口座を開設する場合は、親権者が申し込み手続きを行いますが、親権者自身も新生銀行に口座開設が必要です。ただし、親権者と未成年者の口座を同時に開設することはできません。そのため、先に親権者の口座を開設してから未成年者の口座を開設するようにしてください。
本人確認書類
郵送による口座開設の場合、利用できる本人確認書類は多岐にわたりますが、何を提出するかによって必要な数や組み合わせが異なります。不備となって再提出を求められないように、きちんと確認しておきましょう。ここでは、成人(18歳以上)かつ日本国籍の場合の必要書類を紹介します。組み合わせのバターンは、次のいずれかです。
1.「Aのコピー」1点+「Aのコピー1点」(合計2点)
2.「Aのコピー」1点+「Bの原本」1点(合計2点)
3.「Cの原本」1点(合計1点)
A | B | C |
次のいずれか ・運転免許証(または運転経歴証明書)・各種健康保険証・パスポート・個人番号カード・住民基本台帳カード(写真付)・各種年金手帳・各種福祉手帳 ※有効期限内、または現在有効なもの | 次のいずれかの請求書 ・固定電話・電気・水道・ガス・NHK ※作成・発行後6ヵ月以内の原本で、現住所・氏名が記載されているもの | 次のいずれか ・住民票・住民票記載事項証明書・印鑑登録証明書 ※作成・発行後6ヵ月以内のもの |
なお、提出書類によっては、以下のような注意事項があります。
・各書類に記載されている本籍地などを塗りつぶす
・現住所・氏名・生年月日が鮮明に写るようコピーする
・マイナンバーの記載があるものはマイナンバーを塗りつぶすなど
郵送する前に、新生銀行のサイトでしっかりと確認してから郵送するようにしてください。
新生銀行の口座開設まとめ
新生銀行は、従来の金融サービスでは満たされない顧客のニーズに対応する商品・サービスを提供しているユニークな銀行です。今回、手数料面やポイント面を中心にさまざまなメリットを紹介しましたが、超低金利時代における銀行商品のデメリットを充分にカバーし、利用者にお得を提供できる銀行といえるでしょう。
口座開設をすることで、さまざまなメリットを享受できるため、早速新生銀行で口座開設してみてはいかがでしょうか。
文・續恵美子(日本FP協会認定CFP(R))