初めて株式投資や投資信託の購入をする場合、行わないといけないのが証券会社での「口座開設」です。ただ、初めて投資をする人が悩むのが「どうやって口座の申し込みをするか?」と「どこで口座開設をするか?」ではないでしょうか。
そこで、この記事では、初めての人でも分かりやすいように、証券会社の口座の開設方法について詳しく説明しつつ、どのように証券会社を選ぶといいかについても解説していきます。ぜひ参考にしてください。
証券会社で口座を開設する際は、「勤務先の確認」「本人確認書類の提出」が必須です。
証券会社の口座開設時に必要なものとは?

勤務先の確認(内部者登録)
証券会社の申込書には、氏名・住所・生年月日などの記載以外に、インサイダー取引防止のため、勤務先の記載も必要です。記載された勤務先をもとに、内部者登録が行われます。インサイダー取引とは、会社の内部情報を知る従業員・役員がその立場を利用して得た重要情報をもとに株式・債券取引を行い、利益を得るものです。
金融商品取引法により規制されています。インサイダー取引を防止するために、「内部者登録」が行われ、該当しそうな銘柄の注文時にインサイダー情報の有無を確認されるのです。内部者登録は、正社員であれば勤務先を申込書に記載するだけで問題ありません。ただし、派遣社員の場合は、派遣先・派遣元の両方を記載することが必要です。
正式な社名などを申込前に確認しておきましょう。なお、内部者登録はパート・アルバイト従業員であっても必要です。
本人確認書類について
各証券会社によって若干の違いはありますが、本人確認書類として使えるものには以下の書類があります。
- 個人番号カード
- 運転免許証
- パスポート
- 住民票の写し
- 各種健康保険証
- 住民基本台帳カード
- 在留カード・特別永住者証明書
- 年金手帳
- 印鑑登録証明書
これらの中から1つ、もしくは2つ以上を組み合わせて提出します。「Web申し込み」「郵送申し込み」など、申込方法によっても提出書類が変わる場合があるため、事前に確認して置くと安心です。では、主な本人確認書類について確認していきましょう。
個人番号カード
いわゆる「マイナンバーカード」とも呼ばれるものです。顔写真とICチップが付いたプラスチック製カードです。公的にも本人確認書類として利用できます。通知カードとは異なりますので注意しましょう。
証券会社では、口座開設時に個人番号の提出が必須です。そのため、証券会社によっては個人番号カードさえ提出すれば、本人確認+個人番号の確認が行える場合もあります。
運転免許証・パスポート
運転免許証・パスポートも、本人確認書類として利用できます。運転免許証を本人確認書類として提出する場合は、表面だけでなく裏面まで送る必要があるかまで確認しておきましょう。なぜなら、証券会社によっては、「記載の有無にかかわらず裏面のコピーまで送ることが必要」としているところがあるからです。
また、運転免許証やパスポートのみでは個人番号の確認はできません。これらを本人確認として利用する場合、別途、個人番号が分かるもの(個人番号カード、個人番号通知カード、住民票写し)の提出も必要です。
住民票写し・印鑑登録証明書
住民票の写しや、印鑑登録証明書も本人確認書類として提出できます。他の本人書類と共に提出することを条件としている場合もあるため、確認しておきましょう。また、これらの公的書類を提出する場合は、有効期限も確認してください。例えば、「発行後6ヵ月以内」など、証券会社によって条件が付く場合もあるため、注意しましょう。
年金手帳
年金手帳を本人確認書類として利用できる証券会社もあります。ただし、住所記載欄がない青色の年金手帳(1997年1月以降発行のもの)は使用できません。年金手帳も、他の本人確認書類と共に提出することが条件となっている場合があります。
特定口座と一般口座の違いとは?
証券会社で口座を作る場合、「特定口座」「一般口座」のどちらにするか選択が必要です。2種類の口座の特徴やメリット・デメリットについて把握した上で申し込みましょう。
特定口座
上場株式や投資信託などを売買して利益が出た場合は、利益に約20%の税金が課税されます。また、一定以上の利益が出た場合は、原則として確定申告が必要です。その際、1年間の損益の計算をしないといけません。しかし、特定口座を選択した場合は、証券会社が1年間の損益を計算して「年間取引報告書」を作ってくれます。
つまり、自分で損益計算をする必要がなくなるのです。また、特定口座を作った場合、その年最初の売却時までに「源泉徴収あり・なし」が選択できます。源泉徴収ありを選択すると、利益に対する税金は証券会社が源泉徴収してくれるため、確定申告が不要です。源泉徴収なしを選択した場合は、利益によっては確定申告が必要になります。
・特定口座のメリット
特定口座のメリットは、主に以下の3つです。
- 確定申告が不要になる(源泉徴収ありを選択した場合)
- 「年間取引報告書」があるため、確定申告が容易(源泉徴収なしの場合)
- 年間20万円以下の利益の場合は確定申告が不要(源泉徴収なしの場合)
・特定口座のデメリット
特定口座の主なデメリットは、以下の3つです
- 年間20万円以下の利益の場合、確定申告と納税が原則不要な給与所得者、年金所得者でも自動的に税金が徴収される(源泉徴収ありの場合)
- 複数の証券会社で取引している場合は、それぞれの会社の「年間取引報告書」を集め、損益計算が必要(源泉徴収なしの場合)
- 配偶者控除・扶養控除の際の所得に合算される(源泉徴収なしの場合)
一般口座
一般口座は、契約者自身が1年間の売買損益を計算し、一定の金額以上の所得となる場合は、確定申告が必要な口座です。特定口座のように、証券会社が年間損益を計算してくれるわけではないため、「年間取引報告書」は交付されません。
・一般口座のメリット
一般口座の主なメリットは、以下の通りです。
- 年間20万円以下の所得の場合は、確定申告が不要
・一般口座のデメリット
一般口座の主なデメリットは、以下の3つです。
- 年間取引報告書が交付されないため、自分で1年間の損益計算をしないといけない
- 年間所得が20万円超の場合は、確定申告が必要
- 配偶者控除・扶養控除の際の所得に合算される
特定口座・一般口座どちらを選ぶ?
「特定口座と一般口座のどちらを選ぶとよいのか」については、世帯構成や所得状況、給与所得者か等によって異なります。ただ、一般的に給与所得者の場合、特定口座(源泉徴収あり)を選ぶほうが管理はしやすいでしょう。
なぜなら、上述したように確定申告の必要がなくなるからです。ただし、源泉徴収ありの場合は、取引ごと利益に税金がかかるため、1年間の取引を通算して損失が出たとしても税金を支払うことになる点は注意してください。
NISA(一般NISA)、つみたてNISA、iDeCoとは?

株式や、投資信託の取引をする場合、「なるべく税負担を少なくしたい」と考える人は多いのではないでしょうか。税負担を減らしたい場合は、配当金や分配金、譲渡益が非課税になる「NISA(一般NISA)」「つみたてNISA」「iDeCo」などを検討するといいでしょう。
例えば、NISA口座は、証券総合口座を開設した後に、別途口座を開設することが必要です。(同時開設も可能)ここでは、「NISA(一般NISA)」「つみたてNISA」「iDeCo」とは何かについて確認していきましょう。
NISA(一般NISA)とは?
NISA(一般NISA)の特徴は、以下の通りです。
利用できる人 | 日本国内居住の20歳以上の人 |
非課税対象 | 株式・投資信託から得られる配当金・分配金・譲渡益 |
非課税投資枠 | 新規投資枠毎年120万円(最大600万円まで) |
非課税期間 | 最長5年間 |
※2021年時点
NISA(一般NISA)口座で株式や投資信託の取引を行い、得られた利益はすべて非課税です。新規投資枠が毎年120万円と上限がある点は覚えておきましょう。NISA(一般NISA)は、すべての金融機関で1人1口座しか開設できません。そのため、口座を開設するときは、どの証券会社にするかを慎重に選んでください。
つみたてNISAとは?
つみたてNISAの特徴は、以下の通りです。
利用できる人 | 日本国内居住の20歳以上の人 |
非課税対象 | 一定の投資信託で得られた分配金や譲渡益 |
非課税投資枠 | 新規投資枠毎年40万円(最大800万円まで) |
非課税期間 | 最長20年間 |
※2021年時点
NISA(一般NISA)と異なり、つみたてNISAの非課税対象は「金融庁が選定した投資信託のみ」です。対象となる投資信託の特徴は、「手数料が低水準」「分配金が頻繁に支払われない」など、長期間にわたり積立方式で分散投資ができる銘柄に限られています。
つみたてNISAも、NISA(一般NISA)同様に1人1口座しか開設できません。また、NISA(一般NISA)との併用ができないため、どちらかを選択することが必要です。
iDeCoの特徴
iDeCoは、「個人型確定拠出年金」となるため、NISA口座とは大きく異なり、老後の生活資金作りが目的の投資となります。特徴は、以下の通りです。
加入できる人 | 日本国内居住の20歳以上60歳未満の人 |
掛け金 | 毎月5,000円以上(1,000円単位) ※属性(職業)により加入限度額は異なる ※累計投資額の上限なし |
運用期間 | 60歳まで ※原則引き出し不可 |
税金 | 掛け金:全額所得控除 運用益:非課税 受取時:退職所得控除・公的年金控除 |
iDeCoで運用したお金は、原則60歳まで引き出し不可です。そのため、「数年後にお金を使いたい」といった資金の運用は避けましょう。また、属性により毎月の掛け金上限が異なるため、自分の上限額がいくらになるかは事前に確認が必要です。iDeCoもNISA口座同様にすべての金融機関で1人1口座しか開設できません。
ただし、NISA口座との併用は可能です。
どこで口座を作る?証券会社選びで重視したいこと
証券会社の口座の種類は、しっかりと把握できたでしょうか。証券口座を開設する場合は、以下のような点を重視して証券会社を選定することが大切です。
口座開設が簡単にできるか?
まずは、口座開設手続きが簡単かどうかを確認しましょう。口座開設の方法には、主に「郵送」「店舗」「インターネット」の3つがありますが、手続きが簡単なのは「インターネット」です。インターネット申し込みであれば、ネット環境さえ整っていればパソコンやスマートフォンでいつでも申し込むことができます。
そのため、申込時間を気にすることもありません。また、郵送申し込みに比べて口座開設完了までの時間も短く済む点は大きなメリットです。例えば、SBI証券の場合は、郵送申し込みを選択すると、申込書返送から口座開設まで10日程度かかります。しかし、インターネットで申し込めば、すぐに口座開設が可能です。
さらに、本人確認書類の提出もネット上で行える証券会社を選ぶとスムーズに口座開設が行えるでしょう。
取引ツールが使いやすいか
多くの証券会社は、ネット取引が可能です。そのため、各証券会社が提供している取引ツールについても確認しておきましょう。特に、以下のポイントのチェックが必要です。
- スマホの場合、取引専用アプリがあるか?
- 銘柄の分析ツールが使えるか?
- 投資情報が豊富か?
「取引ツールのどういった点を重視するか」は、人によって異なります。そのため、実際に取引ツールを使った人の評判などを確認しながら選ぶことも方法の一つです。
取扱商品数
上場株式については、どの証券会社を選んでも売買ができます。しかし、投資信託などは証券会社によって取扱商品や本数が異なります。なるべく多くの中から選択したい場合は、この点もチェックしてください。
「銘柄が多すぎても迷ってしまい選びにくい」といった場合は、数は少なくても各ジャンル(国内株式・外国株式・債券など)の投資信託を偏りなく取りそろえている証券会社を選ぶとよいでしょう。
相談窓口が充実しているか?
取引ツールの使い方や、手続きなどで疑問が出てくることもあるかもしれません。そのため、いつでも相談できるように、相談窓口が充実しているところを選びましょう。相談窓口には、以下のようなものがあります。
- 店頭
- 電話(コールセンター)
- メール
- チャット
自分が使いやすい窓口があるかだけでなく、受付時間も確認してください。
手数料
株式売買をする場合は、基本的に株式委託手数料がかかります。手数料は、各証券会社で自由に設定ができるため、なるべく安いところを選ぶことがおすすめです。ちなみに、以下のような傾向があるため、押さえておきましょう。
・ネット証券会社:株式委託手数料が低い
・店舗型証券会社:株式委託手数料が高い
また、同じ証券会社内でも「売買の都度手数料がかかる」「一定金額まで手数料が一定」など、手数料コースが分かれているケースもあるため、自分の取引頻度や金額なども考慮しながら決めるとよいでしょう。取引コースは、途中で変更することも可能です。
おすすめ証券会社をご紹介!
具体的に、どういった証券会社を選べば良いのでしょうか、ここでは、おすすめの証券会社を4つご紹介します。
SBI証券
SBI証券は、2021年3月22日時点で口座開設数600万口座を達成しており主要ネット証券でトップです。おすすめポイントは、次の通りとなっています。
- ネット上で口座開設可能
- 本人確認書類もネット上で提出可能
- 使いやすい取引ツール
- クレカで投資信託の購入可能
- 100円から投資信託購入が可能
- Tポイントが貯まる・使える
- 手数料が格安。1日定額制もあり
- 投資信託の取扱銘柄2,680(2020年10月7日時点)
手数料が低いため、取引コストを気にする人におすすめの証券会社です。投資信託も100円から購入できるため、少しずつさまざまな銘柄を買いたい場合でも便利に利用できるでしょう。また、クレカ(Vポイントが貯まる三井住友カード)で投資信託の購入ができます。クレカのポイントを貯めたい人にもおすすめです。
楽天証券
ネット通販でも有名な「楽天」グループの証券会社です。2021年5月19日には、口座開設数600万口座を達成しネット証券トップとなるSBI証券を追随しています。おすすめポイントは、以下の通りとなっています。
- 手数料が格安
- 投資信託の買付手数料無料
- 初心者向け投資情報が豊富
- 楽天ポイントで買付可能
- 楽天銀行と連携で金利の優遇あり
楽天証券は、楽天のサービスを利用する人にお得な証券会社です。ショッピングで貯めた楽天ポイントを投資に利用することもできます。また、楽天銀行と連動することで金利優遇も受けることも可能です。さらに、全く投資をしたことがない人のための投資情報提供が充実している点も、おすすめポイントといえるでしょう。
マネックス証券
2021年7月末時点での口座開設数は、約196万口座。ネット証券として有名なマネックス証券のおすすめポイントは、以下の通りです。
- 外国株の取り扱いが豊富
- 手数料が低め
- 新規公開株(IPO)の抽選が公平
マネックス証券は、ある程度証券取引に慣れた人にも人気の会社です。米国株や中国株も数多く扱っているため、いずれは外国株にチャレンジしたい人にもおすすめ。また、新規公開株の扱いも多く、抽選も平等に行われている点も一押しポイントといえるでしょう。
岡三証券
店舗型証券会社の岡三証券のおすすめポイントは、以下の通りです。
- 対面で担当者と相談可能
- ネット、コールセンターなど取引ツールが多彩
- 情報提供が充実
岡三証券の強みは、対面で投資相談ができる点です。銘柄の見通しや選び方を詳しく知りたい人にはおすすめといえます。また、取引ツールが多い点も見逃せません。対面で相談できることから、パソコンやスマートフォンでの取引が苦手な人にもおすすめです。
証券会社の特徴はさまざま!自分に合ったところを選ぼう
ネット証券会社・店舗型証券会社がありますが、「口座開設のしやすさ」という観点から見ると、ネット証券会社がおすすめです。また、同じネット証券会社でも手数料は会社によって異なります。取引頻度や取引金額を考慮したうえで、自分にあった証券会社を選ぶようにしましょう。場合によっては、複数の証券会社口座を開設しておくことも選択肢の一つです。